前回からの続き。これで最後です。
今回は「TOONGUIDE3」に掲載されてる、宮本浩さん
インタビューから色々と抜粋したいと思います。
宮本さんは、カートゥーンネットワークの立ち上げに関わって、
「デクスターズラボ」や「パワーパフガールズ」
「おくびょうなカーレッジくん」「KNDハチャメチャ大作戦」など、
初期のCN作品(主に「ティーンタイタンズ」以前)の吹き替えに
多く関わっていらっしゃった方です。
「デクスターズラボ」は、CN初のオリジナル作品だったわけですが、
開局のドタバタと相まって、色々と大変だったようです。
実際に第51話のオペラエピソードが、初回では放送されずに、
数年経ってから初めて録音されて放送された、などの混乱もあったとのこと。
その中で今回紹介するのは、デクスターの「訛り」の設定。
実はデクスターは、原語では「ロシア訛り」という設定だったのです。
しかし当然ながら、その設定は吹き替えではスルーされました。
何故スルーしたのか?という問いに対して宮本さんは…
アメリカドラマや映画などの作品の登場人物には、アイリッシュ訛りや
オランダ訛り、そして南部訛りなど、多くの「訛り」が登場します。
これらの「訛り」は、日本語で再現する事はもちろん難しいのですが、
例えば南部訛りなどは、一昔前は田舎っぺ言葉などにされていました。
現在も使われているかどうかは、定かではありません。
しかし何気なく見ていた番組に、そういうルールが定められていたという事は、
実に興味深いですし、そしてそれは「子供番組」だからこそ、
定められたルールなのです。
このブログを見ている方なら既にご存知かとは思いますが、
主役のカーレッジくんはピンク色の犬で、原語版では
ほとんど全く喋りません。ただ吠えているだけです。
しかし日本語吹き替え版では、カーレッジ役の声優の菅原淳一さんの
大量のアドリブによって、ダジャレやオヤジギャグなどを
喋りまくってしまっています。
では一体何故カーレッジは、このように喋るようになってしまったのでしょう?
「作品のテーマを理解しやすくするため」に入れられた物だ、
という事が解ります。菅原さんの暴走は、それはまた別問題なのだけど(笑)。
しかし単純にアドリブと言っても、実はその裏には
やはり「ルール」があったのです。
現在はまた状況が違うかも知れませんし、CN以外の吹き替え作品については、
また別問題でしょう。
一度放送されればそれで終わり、な地上派とは状況が違うと言えます。
ただその作品作りに対する真摯な姿勢は、前回紹介した
高桑慎一郎さんに通ずる物があるのでは無いでしょうか。
最後に、宮本さんの言葉で締めたいと思います。
さて今回紹介した宮本さんのインタビューが掲載されている
「TOONGUIDE3」は、現在まだ通販できるようです。
残部数少ないと思いますので、ご興味ある方はお早めに。
前回の高桑さんインタビュー掲載の「TOONGUIDE2」は、
すでに在庫が無くなっております。しかし「TOONGUIDE5」には、
高桑さんと石川進さんの対談が収録されております。
こちらもどうぞよろしくお願いいたします。
…って、宣伝かよっ!
今回は「TOONGUIDE3」に掲載されてる、宮本浩さん
インタビューから色々と抜粋したいと思います。
宮本さんは、カートゥーンネットワークの立ち上げに関わって、
「デクスターズラボ」や「パワーパフガールズ」
「おくびょうなカーレッジくん」「KNDハチャメチャ大作戦」など、
初期のCN作品(主に「ティーンタイタンズ」以前)の吹き替えに
多く関わっていらっしゃった方です。
「デクスターズラボ」は、CN初のオリジナル作品だったわけですが、
開局のドタバタと相まって、色々と大変だったようです。
実際に第51話のオペラエピソードが、初回では放送されずに、
数年経ってから初めて録音されて放送された、などの混乱もあったとのこと。
その中で今回紹介するのは、デクスターの「訛り」の設定。
実はデクスターは、原語では「ロシア訛り」という設定だったのです。
しかし当然ながら、その設定は吹き替えではスルーされました。
何故スルーしたのか?という問いに対して宮本さんは…
というか日本人でロシア訛りって表現出来る人がいる?(笑)ロシア訛りって難しいでしょう。中国訛りだったらねぇ、まだイメージがつかめるし、ちょっとフランス訛りがあります、ならまだ表現の仕方もありますけどね。デクスターはロシア訛りって設定があって、ロシア語では何を発音しないだとかっていうのを指示した紙が来たりもしたけれど、もともと日本語に無い発音だったりするんで、それを表現できるわけがない。
確かに最もな話です。しかしアメリカアニメ、いやアニメ以外にもだからオーディションの時にも、とりあえず訛りっぽくやってもらっていたんですよ。でもなんだがズーズー弁っぽくなっちゃったり、はたまた大阪弁っぽくなってしまったりね、正体の無い方言になってしまったんですよ(笑)。それは好ましくないだろうと。わざわざ訛るっていう必要性がどこにあるんだというところで、「ロシア訛りがある」って設定は、無視せざるをえなかった。というのが真相ですね。
アメリカドラマや映画などの作品の登場人物には、アイリッシュ訛りや
オランダ訛り、そして南部訛りなど、多くの「訛り」が登場します。
これらの「訛り」は、日本語で再現する事はもちろん難しいのですが、
例えば南部訛りなどは、一昔前は田舎っぺ言葉などにされていました。
昔の吹き替えとかはそういうのが多かったけども、なんていうかな、吹替えで田舎者にしてしまう事によって、そのキャラは際立つんだけれども、そのキャラがよりおかしなキャラになってしまって、「田舎者イコール頭の弱い子」というイメージを私たちは作りたくなかった。
ここで語られる「ルール」は、もちろんCN初期の物であり、やっぱり「小さいお友達」対象の番組でもあるし、そういう中で「田舎者は頭が悪い」っていう設定をつけたくない、というのがあったんです。この辺はカートゥーンネットワークの中で、初期の頃からずっと話し合ってきたことでね。放送禁止用語についてもそうなんだけども、そういうルールがあったんです。「必然性が無い訛りは使わない」っていう事です。
現在も使われているかどうかは、定かではありません。
しかし何気なく見ていた番組に、そういうルールが定められていたという事は、
実に興味深いですし、そしてそれは「子供番組」だからこそ、
定められたルールなのです。
続いて「おくびょうなカーレッジくん」の話。まとめて言うと「人を馬鹿にしない」「動物をいじめない」「人を傷つけない」っていう事。例えば、アメリカで多いのは、「歯の矯正器を付けてる子供」っていうのを茶化したり、馬鹿の象徴として使っていたりするんだけど、じゃあ日本にそういう子供がいたら、それはイジメの対象になってしまうだろうと。そういう事はやりたくない、そういう風にチャンネルを持っていきたくない、っていうのがあったんですよ。本当はそのまんまやってしまった方がより面白くなるんだけどね。
このブログを見ている方なら既にご存知かとは思いますが、
主役のカーレッジくんはピンク色の犬で、原語版では
ほとんど全く喋りません。ただ吠えているだけです。
しかし日本語吹き替え版では、カーレッジ役の声優の菅原淳一さんの
大量のアドリブによって、ダジャレやオヤジギャグなどを
喋りまくってしまっています。
では一体何故カーレッジは、このように喋るようになってしまったのでしょう?
カーレッジ自身がそんなに喋るキャラでは無いじゃないですか。本来喋らない役どころで存在はしてるんだけども、喋らないと「カーレッジ」のテーマとして存在している「愛」が伝わらない。
話を聞く限りでは、カーレッジのアドリブはミュリエルに対する愛っていうものがあって、「おくびょうなカーレッジくん」というのは、裏を返せば「勇敢なカーレッジくん」っていう事になるんだけれども、その勇敢さを喋らないで表現するっていうのは難しいだろう、っていうところがあったんですよ。最初の頃からそれはもう問題提起されていたんだけれども、初期の頃はごく普通にやっていたんです。でもやっぱり味付けとして足んないなって、実はずっと思ってた。で、ある時にね、菅原さんなので、ちょっと水を向けてみたところ、『ミュリエルのためならエンヤコーラッ』ってな感じで、もうアドリブやるわやるわで(笑)。それ以来、私たちは「放し飼い」と呼んでるんだけども(笑)。
「作品のテーマを理解しやすくするため」に入れられた物だ、
という事が解ります。菅原さんの暴走は、それはまた別問題なのだけど(笑)。
しかし単純にアドリブと言っても、実はその裏には
やはり「ルール」があったのです。
つまり、流行語などは入れないという方針だったようだ。ただ「カーレッジ」に関しては、アドリブでも普遍的に使えるギャグを選んだつもりだけどね。
もちろんこれはあくまでも、初期CNの中でのルールですので、たとえばね、パイレーツが流行った頃に「だっちゅーの」を入れたいだとかね、そういうアイデアはあったんだけれども、もう今のお子様には、既に通じないじゃないですか。そもそもカートゥーンネットワークは繰り返し放送する事が大前提の局なので、そういうのは使っても意味が無い。その時に一発だけ面白くてもダメだっていうところがわかっていたので、「カーレッジ」の中でも普遍的な言葉しか選んでないはず。
現在はまた状況が違うかも知れませんし、CN以外の吹き替え作品については、
また別問題でしょう。
一度放送されればそれで終わり、な地上派とは状況が違うと言えます。
ただその作品作りに対する真摯な姿勢は、前回紹介した
高桑慎一郎さんに通ずる物があるのでは無いでしょうか。
最後に、宮本さんの言葉で締めたいと思います。
やっぱりこういったエンタテイメント作品を作るには「愛」が必要不可欠だと思うんですよ。今まで8年近く関わってきて、もちろん楽しいだけじゃない、大変な事もあったけれど、それを乗り越えられたのはやはり作品に対する「愛」があったからこそなんですよね。実際アニメに対する愛情を持ったスタッフが多かったんです。だからこそ、私もその気持ちに応えるために、とにかく楽しいものをね、エンタテイメントを作っていこうとして、仕事の枠を越えて色々やりました。
さて今回紹介した宮本さんのインタビューが掲載されている
「TOONGUIDE3」は、現在まだ通販できるようです。
残部数少ないと思いますので、ご興味ある方はお早めに。
前回の高桑さんインタビュー掲載の「TOONGUIDE2」は、
すでに在庫が無くなっております。しかし「TOONGUIDE5」には、
高桑さんと石川進さんの対談が収録されております。
こちらもどうぞよろしくお願いいたします。
…って、宣伝かよっ!
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コメント
1. 無題
今回のインタビュー記事でも触れられてる通り、事情や理由(作戦?)があってのこともあると。
考えられていることが分かってから、
というところとは違う次元の所(面白いのでよし、という少し乱暴な考え)で受け入れるようになりましたが(笑)
記事を読んで吹き替えをあなどってたかな、と改めて思いました。
そして、前の記事ではありがとうございました。
スーパーバイジングなんちゃらてのがどうにも引っ掛かってたもんで…
2. 無題
色々と難しい部分はあるんですよね。
ただまあ今回の例のように、時には
作品そのものが持つ魅力・テーマを最大限に引き出すために、
色々とアレンジを加えないといけない、
という場合があるんですよね。