「トランスフォーマー2010」(以下「2010」)は異色のシリーズである。
「戦え!超ロボット生命体トランスフォーマー」(以下初代)にも異色回は存在したが、
「2010」は毎回がその異色回レベルだと言っても過言では無い。
そして改めて「2010」を見ていくと、実は「狂気」というキーワードが多くある事に気付かされる。
「2010」で狂気というと、ほとんどの人はガルバトロンを思い出すだろう。
「初代」での破壊大帝メガトロンと同一人物でありながら、
暴力と破壊衝動に支配されてしまったその姿は、まさに狂気そのものである。
「クモの巣惑星」のエピソードは、ガルバトロンの狂気が実に良くうかがえるエピソードであるし、
「2010」を代表する話だと言ってもいいだろう。
しかしこの「狂気」は、何もガルバトロンに限った話では無いのだ。
同じデストロンのサイクロナスも、ガルバトロンを「狂信」している。
アニマトロンやテラートロンなどは、「野生」のカオスを纏った狂気だ。
デストロンだけでは無い。サイバトロンも実に多くのキャラが、狂気にとらわれている。
常にテレビばかり見ているジャンキオンのレックガーなどは、まさにその代表格だろう。
何を言っているのか分からないブラーの早口は、見る人にとっては間違いなく狂気だ。
チャーの狂気は、過去に囚われその思い出ばかりを話す事であろう。
そして実はロディマスコンボイですら、狂気に蝕まれているのだ。
「戦いか死か?!」のラストで、デストロンに占拠された惑星パラドロンを
「平和のため」という理由で爆破するロディマスの行動は、
まさに狂気ゆえと言えるのでは無いだろうか。
ロディマスはマトリクスという「叡智」を受け継いだことで
悩むようになり、孤独な狂気に囚われてしまったのだ。
そしてもう一人、デストロンでありながらマトリクスを得たスカージは、
狂気の暴走を始めてしまった。「叡智」ですら狂気となり得るのだ。
この狂気をもたらした者は、星間帝王ユニクロンだ。
巨大な惑星がロボットにトランスフォームする、というのは
実に馬鹿げているし、まさに狂気そのものだと言えるだろう。
そう「2010」とはユニクロンによってもたらされた狂気を
どう克服していくか、という話なのだ。
そしてユニクロンにもたらされた狂気は、
「2010」最終エピソードで登場した宇宙ペストによって、宇宙中に広まってしまった。
その危機を救ったのは復活したコンボイと、彼の手に再び戻ってきたマトリクスである。
叡智の光により宇宙ペストは滅び、また狂気も消えていった。
最終回でかのガルバトロンが理性的に振る舞っていたのが、その証拠であろう。
こうして見ていくと「2010」とは、ユニクロンによってもたらされた狂気から
いかにして復興していくか、という話だったのでは無いか、と気付かされる。
「狂気」と「理性」の狭間の物語、それが「2010」なのだ。
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